弁護士 河合弘之

さくら共同法律事務所

特記事件

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河合弘之が担当した注目事件

政府高官を巻き込んで昭和53年に告発された汚職事件「ダグラス・グラマン事件」
河合は証人喚問の随伴者として国会へ。切り札は自己負罪拒否特権!

昭和54年(1979年)TVの前では元総理大臣2人、その後に総理大臣になった人1人を含む政界を揺るがす巨大汚職事件「ダグラス・グラマン事件」の国会証人喚問の生中継に釘付けになる人々がたくさんいました。その時に証人喚問を受けた一人が日商岩井航空機部課長代理だった有森國雄氏。河合は有森氏証人喚問の随伴者として国会に入りました。

 

当時の衆議院予算委員会の証人喚問は大変厳しいものだったため、答弁に窮しないよう河合は有森側と綿密な事前打ち合わせを行いました。この頃、すでに「記憶にございません」は証人喚問で使われており流行語化していた上に、あやふやな発言が不信感を惹起することも踏まえ、証人に嘘をつかせず、不利な発言をせずに済むよう、河合は考え抜いたと言います。考え抜いた末の方法論が<自己負罪拒否特権>でした。憲法に規定されている「何人も自己に不利な供述を強要されない」という権利の行使です。

 

「自分が起訴された時に不利になりますので、その証言はできない」というものでした。この一連の国会生中継では、証人たちの震える手、額に浮かぶ脂汗など、言葉には出さなくても証人たちが窮する様が大きく話題になっていた中で、有森・河合コンビは<自己負罪拒否特権>を行使して証人喚問を切り抜けることができたのです。有森氏は事件本体においては罪に問われることはありませんでした。

 

当時、河合弘之35歳。これ以降、政財界の事件の用心棒弁護士として大舞台に登場していくことになるのです。

 

ダグラス・グラマン事件

 

秀和VS忠実屋・いなげや事件
第三者割当に対する証券市場ルールを書き換えた判決!

これは昭和の快男児/不動産王と呼ばれた小林茂の会社「秀和」(不動産会社)によるスーパー忠実屋・いなげやの企業買収に関する事件でした。忠実屋・いなげやとライフの三社合併による『流通再編』を想定したM&A実施のために株を買い進める秀和に対抗するため、忠実屋・いなげやがとった作戦が二社による<資本提携>と<業務提携によるシナジー効果の活用>を謳う相殺第三者割当増資で、この作戦は野村証券と森綜合法律事務所という2つの業界トップが考えたものでした。一方、秀和の顧問弁護士だった河合はこの第三者割当に対抗することになりました。誰もが忠実屋・いなげやが勝つとみていたこの事件、河合には陥落ポイントがみえていたのです。

 

それは、第三者割当として発表された株価でした。発表株価が安すぎると河合が思っていた頃、ラッキーな助っ人も得られました。銀座のママが河合に言ったのです。「冗談じゃないわよ。前の日に5000円以上払って忠実屋の株を買ったのよ。その翌日に1120円で第三者割当なんて許せないわ」と。怒ったママがくれた胡蝶蘭の写真とその言葉を「市場が怒っている」証拠として裁判所に提出したのです。河合はここを突くと決めたら徹底してそれだけを主張します。相手の論争に引き込まれないのです。不当に安い第三者割当価格を徹底的に叩く作戦は奏功し、保証金を立てずに仮差し止めを行うという「株の公共性」に配慮した仮処分が出されたのです。この判決以降、第三者割当の相場は<前日終値の90%以上>という基本ルールが生まれました。市場の透明性と公正さを保つ――未来の代理人を自認する河合にとって、特筆すべき事件となったのです。

ロッテvsグリコ比較広告事件
原審を覆した逆転勝訴の鍵は“科学の再現性”

【「ロッテVSグリコ キシリトールガム比較広告」事件】

これは2003年5月からグリコが「ポスカム」<クリアドライ>の新聞広告において「一般的なキシリトールガムの比較試験」との見出しを使い、「ポスカム」が“一般的なキシリトールガム(暗にロッテのガムを示している)”の5倍の再石灰化効果を有するという比較広告を出したことに対するロッテからの広告差止請求事件でした。

 

一審は、比較広告の根拠が<日本糖質学会>オフィシャルジャーナルに掲載した論文1編の、かつ1回の実験に過ぎず、また、該当する実験は科学的妥当性を欠くため、比較広告としてデータを示すことは虚偽事実の陳述流布にあたるというロッテ側主張を全面的に退けたグリコ側の勝訴でした。

 

控訴にあたり、ロッテ側訴訟代理人の団長だった河合は考えました。「たった1回の実験で、しかも、他の科学者が同じ結果を導き出せない実験には科学的妥当性はない。しかも、実際に実験に使用されたウシ歯が処分されているのだから、再現実験を行うべきだ。このままではおかしい」。控訴審では、河合の主張を受け入れて再石灰化の鑑定実験が行われる運びとなりました。しかし、グリコ側はこの鑑定実験の実施を、鑑定人条件が合わないとして応じませんでした。結果、裁判所は実験の合理性についての立証を自ら自ら放棄したとみなし、ロッテ側の逆転勝訴となったのです。

 

科学的データを用いた場合の<実験の再現性>が論点となったこの事件、最近(2014年)の科学論文取下げ問題(STAP細胞問題)を彷彿とさせると、河合は述懐しています。

 

■判決文に興味がある方は裁判所ホームページ『知的財産裁判例集』掲載PDFをチェック

 

  • 平成17年(ネ)第10059号 広告差止等請求控訴事件
  • 平成18年10月18日判決言渡,平成18年8月3日口頭弁論終結
  • (原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第15674号,平成16年10月20日判決)

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