ロッテvsグリコ比較広告事件
原審を覆した逆転勝訴の鍵は“科学の再現性”
【「ロッテVSグリコ キシリトールガム比較広告」事件】
これは2003年5月からグリコが「ポスカム」<クリアドライ>の新聞広告において「一般的なキシリトールガムの比較試験」との見出しを使い、「ポスカム」が“一般的なキシリトールガム(暗にロッテのガムを示している)”の5倍の再石灰化効果を有するという比較広告を出したことに対するロッテからの広告差止請求事件でした。
一審は、比較広告の根拠が<日本糖質学会>オフィシャルジャーナルに掲載した論文1編の、かつ1回の実験に過ぎず、また、該当する実験は科学的妥当性を欠くため、比較広告としてデータを示すことは虚偽事実の陳述流布にあたるというロッテ側主張を全面的に退けたグリコ側の勝訴でした。
控訴にあたり、ロッテ側訴訟代理人の団長だった河合は考えました。「たった1回の実験で、しかも、他の科学者が同じ結果を導き出せない実験には科学的妥当性はない。しかも、実際に実験に使用されたウシ歯が処分されているのだから、再現実験を行うべきだ。このままではおかしい」。控訴審では、河合の主張を受け入れて再石灰化の鑑定実験が行われる運びとなりました。しかし、グリコ側はこの鑑定実験の実施を、鑑定人条件が合わないとして応じませんでした。結果、裁判所は実験の合理性についての立証を自ら自ら放棄したとみなし、ロッテ側の逆転勝訴となったのです。
科学的データを用いた場合の<実験の再現性>が論点となったこの事件、最近(2014年)の科学論文取下げ問題(STAP細胞問題)を彷彿とさせると、河合は述懐しています。
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- 平成17年(ネ)第10059号 広告差止等請求控訴事件
- 平成18年10月18日判決言渡,平成18年8月3日口頭弁論終結
- (原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第15674号,平成16年10月20日判決)