理論の鬼!河合弁護士の画期的提案!!
2016/09/11
2012年9月、当時の野田政権は”2030年代に原発稼働をゼロにする”というエネルギー・環境会議の決定を閣議決定するに至りませんでした。
その理由のひとつは、六ヶ所村の核燃料再処理事業に関する『覚書』の存在によるものと言われています。
河合弘之弁護士は、これに対し
「『覚書』は『事情変更の原則』により失効したのだ!」という画期的かつ実に論理的な法理論を展開!
2016年9月10日の朝日新聞朝刊「私の視点」欄に「核燃料再処理事業は中止できる」と提言しています。
朝日新聞「私の視点」 (2016年9月10日朝刊)
(全文掲載)
青森県六ケ所村で使用済み核燃料を再処理してプルトニウムと高レベル放射性廃棄物にする工場の建設が進んでいない。東京電力福島第一原発事故への反省から、原発をやめよう、まして核燃料をグルグル回して永久エネルギーにしようという無理な構想はやめ、その一部の再処理工場も止めようという動きがあった。
それに対し、「工場は止められない」という強力な抵抗がある。最有力の根拠は1998年に青森県、六ケ所村と日本原燃株式会社(日本原燃)が締結した「覚書」だ。そこには「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には、青森県、六ケ所村及び日本原燃株式会社が協議のうえ、日本原燃株式会社は、使用済燃料の施設外への搬出を含め、速やかに必要かつ適切な措置を講ずるものとする」とある。これを根拠に「再処理事業をやめたら、今ある使用済み核燃料を全て各原発に返送せねばならない。しかし、各原発の保管場所は既に満杯に近く、それは全原発の停止を意味するので返送受け入れは無理。だから再処理事業は継続するしかない」とする主張だ。
現に野田政権はその主張にぶつかって腰くだけとなり、核燃サイクルの中止を決断できなかった。
しかし、本当だろうか。覚書には「使用済燃料の施設外への搬出を含め」とあるだけで「元の原子力発電所に戻せ」とは書かれていない。日本原燃が別の場所を用意すれば良いのだ。また、各電力会社は覚書の当事者ではないから返送受け入れの義務はない。同様に国も覚書に拘束されない。義務を負うのは日本原燃だけだ。施設外への搬出ができなければ「債務不履行」となるが、その際は損害賠償その他「必要かつ適切な措置」を講ずれば良いのである。
これに対し「国も電力会社も実質上は当事者で、『再処理工場をやめたら使用済み核燃料は各原発に戻すという約束』があったのだ」という反論もあり得る。仮にそうだとすれば、その約束は「事情変更の原則」によって失効したと考えるべきだ。
法律の世界では「事情変更の原則」というのがある。契約成立時の前提だった事情に大きな変動があれば契約は失効するという考え方だ。
「失効する」といっても損害賠償や代替措置を講ずる義務は残る。だから日本原燃は十二分な損害賠償をすべきで、資金が足りなければ国は貸し付けなどの支援をすべきだ。賠償額は巨額になるだろうが、再処理事業を続ける青天井の額に比べればずっと少額で済む。また金銭賠償だけでなく青森県や六ケ所村に自然エネルギーなどの代替産業の整備が必要で、県民や村民が明るい展望をもって繁栄できるようにするべきだ。