秀和VS忠実屋・いなげや事件
第三者割当に対する証券市場ルールを書き換えた判決!
これは昭和の快男児/不動産王と呼ばれた小林茂の会社「秀和」(不動産会社)によるスーパー忠実屋・いなげやの企業買収に関する事件でした。忠実屋・いなげやとライフの三社合併による『流通再編』を想定したM&A実施のために株を買い進める秀和に対抗するため、忠実屋・いなげやがとった作戦が二社による<資本提携>と<業務提携によるシナジー効果の活用>を謳う相殺第三者割当増資で、この作戦は野村証券と森綜合法律事務所という2つの業界トップが考えたものでした。一方、秀和の顧問弁護士だった河合はこの第三者割当に対抗することになりました。誰もが忠実屋・いなげやが勝つとみていたこの事件、河合には陥落ポイントがみえていたのです。
それは、第三者割当として発表された株価でした。発表株価が安すぎると河合が思っていた頃、ラッキーな助っ人も得られました。銀座のママが河合に言ったのです。「冗談じゃないわよ。前の日に5000円以上払って忠実屋の株を買ったのよ。その翌日に1120円で第三者割当なんて許せないわ」と。怒ったママがくれた胡蝶蘭の写真とその言葉を「市場が怒っている」証拠として裁判所に提出したのです。河合はここを突くと決めたら徹底してそれだけを主張します。相手の論争に引き込まれないのです。不当に安い第三者割当価格を徹底的に叩く作戦は奏功し、保証金を立てずに仮差し止めを行うという「株の公共性」に配慮した仮処分が出されたのです。この判決以降、第三者割当の相場は<前日終値の90%以上>という基本ルールが生まれました。市場の透明性と公正さを保つ――未来の代理人を自認する河合にとって、特筆すべき事件となったのです。